2020年7月11日土曜日

山尾貴則さん(作新学院大学人文学部教授)のインタビューをお届けします。

お待たせいたしました。
インタビューの久しぶりの更新です。
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今回は隠れた現代若者の困りなどを分析した本、『ポストモラトリアム時代の若者たち』の共著者、山尾貴則さんのインタビューです。昨年11月に札幌に来られた際の帰宅前の取材と、半年強が過ぎてはしまいましたが。

『ポストモラトリアム時代の若者たち』は専門が臨床心理、社会学、社会思想の三名の方の共著で、そのうち、社会学専門の角度で章を書かれていたのが山尾さんです。ただ、実際は山尾さん自身、広い意味で「自我論」に関心を持たれていて、G.H.ミードという人の自我論を掘り下げられ、社会学からも自我の研究ができると考えられたとのことで、その意味では心理学とも接点が近い研究をされていると思いますし、インタビューの中で話されていた通り、同じ学部では「公認心理士」を目指される学生もいるようです。

お話は大きく二つに。ひとつは今の学生さんたちの役割に加わってきているボランティア。中には単位にボランティア活動も含まれることもあるようです。
もう一つは、今の時代、学生が何かと多忙がデフォルトの時、それに乗り切れず、社会のレールからズレてしまった若者たちのための「若者ミーティング」の現状について。

実際、『ポストモラトリアム』は共著者として私のインタビュー本、『ひきこもる心のケア』の監修を臨床心理学の立場から村澤和多里札幌学院大学教授が手掛けてくれたように、現代の若者が置かれている社会構造の反映として「ひきこもり」があるという流れも一つの大きな要素なので、若者がひきこもることも自然な流れの中で記述されるこの本には、村澤さんと山尾さんのかなり相通ずる社会心理的視点があり、もともと村澤さんが始めた若者の自助グループ、「若者ミーティング」を山尾さんが引き継ぎ、現在も栃木でミーティングの場を実践中ということです。

ご帰宅前の多忙な時間のお話でしたから、あまり深入りした話は出来ませんでしたが、逆にその分、整理された話を聞くことができました。

じっさい、僕は最初ボランティアなどに学生さんが深入りなどすると、就職のためのレールから外れ、不利なことではないかと思っていましたから、逆に大学生さんにボランティアが強く推奨されている時代になっているということは全く初耳で、たいへん興味深いことでした。読み手のみなさんも、そうではないでしょうか。あまり一般には知られていないことではないでしょうか。

その後、ネットの動画配信などを通じて知った、本間龍さんの『ブラックボランティア』(角川新書)などで、東京オリンピックでのボランティア11万人計画などがあった(ある?)ことなどを随分後で知ったことです。イベントプランナーというか、広告大手、電通なども噛んでいるようですが、JOC(組織委員会)と大学が連携協定を結んでいるのです(何と、810校!)。

こういう「大学生頼み」の東京オリンピックなんて、端的に嫌じゃないですか?将来の就職も兼ねて一生懸命になっている学生ボランティアさん頼みなんて。まだこの本間さんの本は読んでいませんが、読んでみたいと思います。

この際に大学生とボランティアの関係についての話を山尾先生から聞けたのは幸いでした。
お話はオリンピックとボランティアとは関係しない、教育や福祉的な学生さんのボランティアの話でしたが、ボランティアを相当な労働力として期待するのは大人はもっと深刻に考えたほうがいいと思いますね。

そして、このコロナ禍、また若者の新しい苦労が始まるのは……本当に勘弁して欲しいですよね。大人は考えてください(自分もそうなのであった💦)

『ポストモラトリアム時代の若者たち。まさに隠れた名著で、素晴らしい感想のブログなども多いのですが、残念ながら現在は廃刊になっています。電子書籍ででも復刊して欲しいですし、もっと言えば時代に合わせ新装版を出してほしいところです。


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