2016年11月20日日曜日

乳幼児研究をされている川田学さんのインタビュー、掲載しました。

お待たせしました。インタビューの更新です。
隔月というペースですが、この8月8日に北大の「子ども発達臨床研究センター」でインタビューさせて戴いた川田学北海道大学大学院教育学研究院准教授のお話を本日、掲載させていただきました。
「子ども発達臨床研究センター」は、教育学研究院の裏手、木々が健やかに生い茂る自然の多い場所に静かにたたずむ瀟洒な建物です。(ちょっと外観は古いかな。それだけに懐かしく馴染みやすい)。

川田先生は乳幼児の研究と幼稚園などでの実践の研究をされているかたで、論文はネットでけっこう読むことが出来ますが、もともとは私にもコラム依頼があった「さっぽろ子ども若者白書」という、乳幼児から青年期まで、研究者から現場のNPOの活動家の実践報告まで載せたほかにあまり見当たらない貴重な青少年報告書で初めて認識したのです。

この白書は子どもや若者支援のNPOなど、市民活動をされている方々のほぼが原稿を書かれていたとはいえ、私は最初は「白書」という言葉のイメージに囚われて、それほど心動かされることなくまず序章の姉崎洋一先生の概観を読み、そして第一章の川田先生による論文、「乳幼児期の発達と子育て・保育の現状」に目を通し始めたのです。そのとき思わず、「何だこれは!これは今までの乳幼児に関する話題を論じた文章とは内容も観点もきっと見たことのない、初めてのものだぞ」とすっかり魅きこまれてしまったのでした。そしてこのかたにお会いして、ぜひともお話を伺いたい、と思ったわけです。

ちなみに、ぼくは子どももいませんし、当然子育ての経験もないわけで、最初は何の期待もしないで読み始めた内容だったのですが、「乳児のときから何か人間のその後における根源がすでにありそうだ」と思ってしまったのでした。今でもその考え、間違いなのかもしれないのですけれど、そう思っている次第です。

そして実際にお会いした川田先生は思った以上に若くて、事前にさまざま読める論文の成熟した印象とはまた少し違う、瑞々しい感じと、柔らかな雰囲気に満ちていました。そしてこちらの話の拙い連想にもどこまでもついて来てくださいそうな柔軟さをお持ちのように感じました。
何よりも嬉しかったのは、素人のこちら側の問いかけにも、けして語る内容を引き下げることはなく、相当な内容を惜しみなく語ってくれたと思われることでしたし、その後レコーダーを起したときにもため息が出るほど濃密な語りをしてくれたなあと改めて思ったものです。(素人だから必要以上に感動したのかもしれません)。

内容は川田先生が自分の研究の参照枠にしているワロンという発達心理学者の話を中心にしながらも、かなり幅の広い話題の展開になりました。
特に川田先生のひとつのターニングポイントになったであろう、学生時代の異性全身介護の重度障がいの女性のかたとの出会い、そして障がいのあるかたたちとの「自立」を巡る議論が大きかったのだろうと思います。
そのあたり、インタビューもたぶんに濃密な内容な分だけ、抽象的な話になっているかもしれませんが、川田先生の話が抽象的に終らないのは、そのような具体的な経験に裏打ちされているからであろうと思います。

たくさんの良い話を聴いてきて、でもその中でも広い意味でも参照枠の多いインタビューが出来たのは光栄な限りです。
「個人は自分の中に他者をはらむもの」。そういう考えがワロンなどから生じた意味などもぜひかつての歴史的経緯なども含めて考えて戴ければ幸いです。
長い内容ですが、関心のある読者様。ぜひ少しずつでも読み進めて戴ければ光栄の至りです。

最後に、今回の参考にした文献をあげておきます。
川田学先生の論文(インターネットで拾えたものより)
・年齢、獲得、定型
・他者の食べるレモンはいかに酸っぱいか
・発達の研究と社会的合意の間で
・異年齢期カップリングの発達学

・ワロン/身体・自我・社会 (浜田寿美男訳・ミネルヴァ書房)
・子ども学序説 浜田寿美男(岩波書店)
・「私」とは何か 浜田寿美男(講談社選書メチエ)

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